はじめての・・・。



「現在、1部屋の空き部屋がございます。同室でよろしければ」
宿屋の受付が言った言葉に身を固める。
だが、隣にいるパートナーのマキシミンはイスピンの気持など知りもせず、
あっさりと答えてしまうのであった。
「チッ、仕方ないか」
(え・・・っ!いいの!?)
「かしこまりました。ではご案内致します」
(えぇぇぇぇ)
イスピンは、受付嬢とマキシミンの後ろを、重い足取りでついて行った。


このやりとりが約五分前。
案内された部屋は、こじんまりとしたテーブルと、両端にベットが一つずつ置かれている
小さな部屋だった。
イスピンは、窓側のベットに腰を掛けた。
ちらりとマキシミンの方を見る。


こいつとペアになってから数日・・・。
相部屋になりました。


マキシミンの事だ。すっかり、相部屋といわれた時点で
「はぁ?こんな奴と一緒なんてごめんだぜ!」
───とでも言ってくれると信じてたのに。


自分が男装しているとはいえ、出会って間もない男の人と相部屋だなんて・・・!
とても想像していなかった事態である。
罪は無いが、受付の笑顔が恨めしい。
イスピンが暗い面持ちで黙り込んでいると、向こうから話しかけてきた。
「おい、明日は何時からだった?」
「え・・・っ?10・・・」
ここでさらに気づいたことがあった。
近い。ベットとベットの間が近い・・・!
両端に置かれているとはいえ、こんな狭い部屋では大して意味は無かった。
「どうかしたか?」
「いや、なんでも。明日は10時からだよ。遅れないように」
「あぁそうだっけ。んじゃ俺はもう寝るわ」
そう言うと、マキシミンはコートを脱ぎ捨て、ベットに潜り込んだ。
部屋がしんと静まり返る。
平常を取り戻したイスピンは、どうせ男だと思われているんだからと気を取り直し、
眠る事にした。


が───
深夜2時。未だ眠れないイスピンがいるのであった。
(お兄様・・・。シャルロット、あんな男が初めての相部屋野朗です)




あとがき
昨年のマキピンWEB企画に寄稿した作品です!
宿屋って同姓同士なら気にせず同室にするものじゃありませんか?
イスピンは男と勘違いされているために、同室になっても断る理由があまり無いのではと思って
このお話を書きました(・ω・ )<あ、でも仲悪いから一緒にいたくないと言えば別室になるか笑
10.1.27