♪Trilogy-影-/ゆん様



そして季節


あなたも私も、ひとつの星だけど
           空に浮かぶ星たちと違うのは・・・



「神田っ!見てみて〜〜」
静寂に包まれる森に響き渡る、可愛らしい高い声。
見た目はまだ9歳頃だろうか。ずいぶんと幼い。
「いいから騒ぐな」
その次に聞こえてきたのは幼さがあるものの、先程の可愛らしい声とはまた違く、少年らしい明るい
声だった。
「ほんとによく見えて綺麗〜」
騒ぐなと言われたものの、まったく声量を抑えようともせずに目を輝かせ、空を見上げる。
「あのなリナリー、こっそり外に出てきたんだからもう少し静かにしろ」
「あ、そうだったね。ごめんごめん」
やっと後ろにいる二つ年上の神田の言葉を聞くが、それでも気持が収まらずそわそわしながら草の上
に仰向けで横になった。
続いて神田もその隣に同じく横になる。
「ね!あの星はなんていう名前?」
息をつく間も無く、指を指して尋ねた。
指された方を見て、神田は少し考え込むとスラスラ説明する。
「そっちは東の空だから、"アルクトゥールス"だな」
「オレンジに明るく輝くからすごく目立つね。どこからでも見れそう。ねね、あっちの東南あたりに
大きく輝いてるのは?」
「アルクトゥールスの右のほうか?あれは・・・確かス・・・」
後半につれ、声が小さくなり最後まで聞き取れなかった。
「ス・・・?」
「確か別名は"真珠星"と言われたはずだ」
「分からないんだ」
「馬鹿!忘れただけだ」
何もかも覚えてきたわけでは無く、水をさされ恥ずかしくなるが隣にいるリナリーこそ何も調べてこ
ないのだから、お前こそ何も知らないくせにと呟くと、リナリーは笑った。
そんな笑顔を見て、神田はいつもこの子が笑顔で居られればいいのにと思った。
「神田、もっと他の星の事も教えて〜」
「仕方ないな」
再び、空に浮ぶ星達の名前や、それに纏わる話を教えていった。



       .:*・.:*・.:*・.:*・.:*・



「それで、アルクトゥールスとこっちの真珠星、そして上の方に少し強く光る星があるだろ?その星
と星を結んだみっつが春の三角形っていうんだ」
神田は暇な時間を見つけては、書庫で今日この日の為に星に関して学んだ。
「そうなんだー。神田すごい!ここまでたっくさんの星について語っちゃったよ」
神田の説明に、リナリーは必死になって聞き入っていた。
「お前だって、書庫に行けば資料があるからもっといろんな事を知れるはずだ」
「そっか、じゃぁ調べなきゃね」
うんうんと頷くと、起き上がろうとしたがやめた。
「いいな・・・」
急に声が細くなる。
「星はすべてを見渡せて。世界のすべてを見れるんだよね。コムイ兄さん、何やってるかな」
細くなった声を心配に思い、神田は起き上がる。暗くてよく見えないが、リナリーの表情は先程とは
うって変わり、悲しげな顔をしていた。
時々リナリーは、自身がイノセンスの適合者だった為に強制的に引き離された兄の事を一人思い悩
んでいるのを知っていた。
「なぁ・・・起こる事実を、あそこにいる星は"見ている事"しか出来ないだろ?」
え・・・?と顔を神田に向ける。
「だけど、俺たち生きている奴らは、見ているだけで何も出来ないのではなく"創る事"が出来るんだ
。"変える"力がある」
その言葉にハッとする。

自分には世界をすべて見渡す事は出来ない。だけど、目の前に起こる事、立ちはだかるもの。それら
からは目をそらせなくて・・・
目を閉じ、耳を塞ぎ、何も知らないふりをしてもやってくる悪夢。
だけど、そこからどの方向に引っ張るかは自分自身で選ぶことが出来る。
震えながらでも、立ち向かえた時こそ

「・・・変わるかな」
「変わるさ」
躊躇いなく言える神田は、何があっても強い心を持つ人だと思った。
「リナリー、確かに強制的に教団に連れて来られたかもしれないけどそこからはお前が変えていけば
いい」
「うん」
揺らいでいた視線は、いつの間にか真っ直ぐに自分を見つめる視線に負けないように神田を見据えて
いた。
「やってみる、少しずつでも」


逃げてしまうかもしれないけど。
変えれるなら、
やってみたい。


まだ不安定だけど、挑戦してみたいと思ったリナリーは立ち上がった。
少しだけ、星空を見上げるとクルリと振り向き神田に笑顔を向けた。
「星を調べに行くときは神田も一緒にね」
「気が向いたらな」




そしたら、もしかしたら、
儚く現実から、想像の世界へと遷りゆいたものも
またこの手の中に戻るのかもしれない。



この世の数年なんて、星にとっては瞬きの一瞬になるかならないかって言うのを聞いたよ。

人生も一瞬なんだろうね。

なら、一瞬の中で生きる私がさらなる一瞬を変えるんだ。

少女が、また一歩進んだとき


季節は巡り


刹那の輝きを散らすだろう


-星は見ていますか? 今の私を・・・











*****あとがき*****
神リナ祭りに参加させていただきありがとうございました!
ギリギリ投函すみません;

今回は星をモチーフにしたかったので星について少し調べるのが楽しかったです。 何せ星好きなので。。。笑
神田が途中、「ス・・・」で分からなかった星はスピカという星です。青白く光るから真珠星と呼ばれるそうですよ。
うちのとこでは星に纏わるお話を書くのは特別な時やCPだけなので大切な作品にもなりました。
神リナ祭りが出来て本当に良かったです!お祭りは閉幕してしまいますが、原作ではまだまだ神リナ祭りを期待して・・・!ありがとうございました。 神リナ最高♪
クリック☆
For you.Asianmary
3.27 By水面が映す神聖な光/サラン