────寒いはずの空気がとても暖かく感じられたんだ。
何でだろう・・・?
その答えは、分かっているはずなのにね。


「寒いなぁ」
真っ白に積もった雪を踏みしめながら息を吐く。
吐く息も白くて、視界に入ってくる色は白一色とも言えた。

それでも構わず歩いていく、突然ピタリと足を止めた。
(気分がてら散歩してみようと思ったけど、寒いし部屋戻ろう)
くるりと方向転換をし、来た道を戻る。
(何だかなー・・・)
アレンは今日、いつも食堂やらで会っているはずのラビやリナリーと会えていない。
そして────
(神田まで・・・)
食事の時間がずれる事は時々あるが、大抵は自室かにいつもいた。
必要外にあまり歩き回る事は珍しいくらいだった。
そんな人がどこにも教団内に見当たらなかった。
まさかラビ達にでもどこか連れて行かれたのかとも思う。
居ないのなら仕方のない事だけども、少し寂しかった。
今日は特に誰かと居たかった。
だって今日は
(僕の誕生日。正しくはマナに拾われた日───なんだけども)
だから、そんな大切な日には自分の大切な人と時間を過ごしたかった。
「ホントに、仕方ないか───うぉッ!?」
教団の建物内に入ろうとしたと同時に、角で視界に入らなかった場所から誰かが飛び出してきた。
「な────!?」
教団から出てきた方も驚き、お互いが顔を見合わせる。
「神田・・・っ」
「モヤシか」
出てきたのは先程までアレンが探していた神田で、こんな所で偶然にも会えるとは思わなかった。
神田の方も、急にアレンが現れたことに驚き呆然とアレンを見る。
「お前、何でこんな所にいるんだよ!」
「それは僕のセリフ・・・」
いきなりの事にどうしたらいいか分からないアレンに対し、神田は驚きつつも話を繋げる。
「とにかく、何してんだか知らねぇが、あっちの奥のほうには行ってないだろうな?」
アレンが来たほうとは違う方の森を指す。
なんとか違うと言うと、神田は何故か安堵した表情になった。
(変なの)
実際歩いてきた方向は違うし神田が慌てるなんて珍しい。あっちに何があるのだろうか?と思う。
「おい、モヤシ────」
言うなや同時に神田は、アレンの手首を掴み、自分の歩く方向へと引っ張った。
「ちょ、神田!?」
神田は眉間に皺を寄せつつ首だけ振り返った。
「とっとと歩け!ノロモヤシ。てめぇの為だ!」
その顔はいかにも迷惑そうだった。
(僕の───為?)
アレンは二度目の分けの分からない事に足元がたじろぐが、
神田が手を引いているのでなんとか引くがままれるに身を任せた。


               *


雪の中に、少しだけ、光が見えた気がした
真っ白な色の中に、ちらりとだけれど。
雪だったかもしれない。

その真実は────

「ちょっと神田、どこまで行くんですか」
まだ神田に手を引かれ小走りしつつ、口を開かない神田似向かって言った。
すると神田は突然ピタリと止まり、アレンは神田の背中にぶつかってしまった。
「な・・・、急に止まらないで下さいよ。もぅ」
「ホラ────」
神田の背中から顔を離し、神田の向こうを見た。
「え────?」

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