-*見上げた空はやっぱりかった*-




無残にも、地面に散りばめられた機械の部品とも言える様な残骸。
そして、今だ空気中に舞い上がっている爆煙。
そこに、黒の教団エクソシストのラビが佇んでいた。
体中傷だらけでボロボロに成り果てた団服を羽織りながら、手には対アクマ武器の槌を握り締め溜め息をつく。
「やっと今回の任務が終わったさー・・・」

目に映るのは 灰色の世界・・・────
アクマ・ノアの一族・千年伯爵・戦争
それを取り巻く世界の終焉の危機・・・
重なって映る色に、鮮明でキレイな色は映ってはいなかった。

「さて、そろそろアレンとの合流地点へと行くか」
自分のイノセンスの柄に跨り、短く「伸」と唱えると一気に柄の部分が伸び、空高く伸び上がった。
その瞬間、自分の視界に入ってきたものを見て、息を呑む。
そこに広がっていたのは、青く美しく広大に広がる空だった。
「灰色・・・ばかりではないんだな────」
ポツリと呟いた。

心に初めて
いや────
忘れていた鮮明な色が、‘記録”ではなく‘記憶”として心に刻まれた。

コムイに以前、教えてもらった事があった。
「疲れたときは空を見てごらん、キレイな色だから」
その時は、真面目に受け止めてなどいなかった。
「そんなの当たり前・・・」位にしか。
だけど、戦を重ねていく度、空の色がどんどん色褪めていっている気がした。
古い書籍のように────
最初はしっかりした独自の色を持つ書籍が、日に当たり、長い時が経ち、セピア色になっていくように────
自分の目も、それと同じようになっていてしまった。
もしかしたら、空すら映していなかったのかもしれない。

ラビは、仲間との合流地点へと向かいながら、何度も何度も空を見た。

それでも、何度見ても、見上げた空はやっぱり青かった────


                  END





お題:リライト様
青い春十題「見上げた空はやっぱり青かった」