綺麗な装飾が施された店のドアから、男女四人組が出てきた。
軽やかな足取りで笑い声を立てる少女。
手にはみたらし団子を持ちながら、サンドウィッチを口いっぱいに頬張っている少年、さらに赤髪の 青年は隣にいる黒髪の同じ年の男をからかって反応を楽しんでいた。
その姿は他の人から見れば、街の一角に住んでいて、今日は友達同士で遊びに出掛けている様子に見 える。どこにも四人の面影には背負われた重い宿命など感じられない、ごく普通の子供の姿だった。
そんな姿を物陰でひっそりと見ている人物がいた。
四人が店から出てきたと思った刹那、"その人物"は物陰から素早く四人の前に出ると、突然手に持っ ていたカメラのシャッターを押した。
パシャリと音がすると、それまで賑やかだった四人────アレンに神田────ラビとリナリーは 突如目の前に現れた人物を見て目を見開く。
「兄さん!?」
最初に声を上げたのはリナリーだった。
「コムイか、驚かせんなさまったくー」
その人物とはリナリーの兄であり、教団の室長を務めてるコムイだった。
「後をつけてたんですか!?」
「そう!気づかれないようにひっそりとね」
ウィンクをする上機嫌のコムイを見ながら
(相変わらずこの人はいつもいつも・・・・)
と誰もが心の中で呟いた。
「でも、おかげでいいものが撮れたよ。楽しそうにしている姿をね。神田くんも、さすがに笑いはし ないけど楽しそうにしていたよね」
「な────っ。バカ言うな!」
声を荒げコムイにつっ掛かろうとする神田の肩にラビの手が置かれる。
「今日のユウはやけに照れるさな」
ポンと手を置かれると、すかさず神田は手を振り払いラビの頭を殴る。
痛いさーと涙目になって神田とやりとりを交わす姿をいつもの事だと思いながらリナリーは聞いた。
「一緒に来たかったなら一緒に来ればよかったのに」
それもそうだけどと、カメラを弄りながら
「撮りたかったんだよ」
「え?」
一言四人を見渡しながら言った。
「カメラを向けてから作る笑顔や姿じゃなく、何気ない時の楽しそうに笑っている姿をね」
その顔は達成感漂う笑みで満ちていた。
「そうだったんですか」
「でも、兄さんらしいわね」
ここまでした理由を知って二人は納得する。
そうしているうちにカメラの新たなセットを終え、少し離れた所で今だ神田を怒らせて楽しんでいる ラビとそれを叱咤する神田にも聞こえるように呼びかけた。
「もう一枚撮るよー!」
気づいてはいるだろうが、まだ二人は猫同士のじゃれあいみたいにしていたのでリナリーとアレンが カメラの前まで連れてこようとした。
「二人とも早くっ!写真撮るってよ」
「いい加減にしてくださいよ。特にラビ、僕の前であまり神田の気を引かないのが身の為ですよ」
「ぇ・・・そう言われると怖いさ・・・」
「お前には関係ないだろモヤシ」
「神田は僕のものですからね」
率直に言われて神田の頬が微かに染まる。
「ホントに今日のユウはテレ屋さんさ♪」
「黙れ馬鹿ラビ!」
神田の腕をアレンが、ラビの腕を、さらに隣にいる神田の腕もリナリーが引いてカメラの前に立った。
普通の人達にはあたりまえな事だって、僕たちにとっては限りなく貴重で、大切な時間
そんな瞬間を、一枚の写真の中に。。。
いつか行く先の未来で、僕らの"今"の幸せを振り返れるように。
「ハイ、チーズッ!」
小さな宝箱の中にしまっておこう
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